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2008年 「まいらいふ」10月号

失明の原因にもなる糖尿病網膜症
内科で「糖尿病」と言われて「眼科受診」を指示されました。見え方に変わりはありません。どのような検査が必要なのですか。(60歳 男性)

糖尿病網膜症とは

 糖尿病になると眼にもいろんな病気が起こります。このうち頻度が高く、失明の一番の原因となるのが糖尿病網膜症です。目はよくカメラに例えられますが、カメラのフィルムに相当するのが網膜です。糖尿病で血糖値が高い状態が長く続くと、網膜の細かい血管が障害され、網膜に傷みが生じ、網膜症が起こります。網膜症は糖尿病になってすぐに起こるわけではありません。数年から10年くらいかけて発症し、25年過ぎると8割の方がなっているといわれています。


症 状

 網膜症は進行する病気です。早期のうちは自覚症状がなく、眼底検査で発見されることがほとんどです。気付かないうちに進行し、「かすむ」「見えにくい」といった症状が現れたときには、失明の危機にある場合もまれではありません。


予防・治療法

 糖尿病の早期発見、早期治療により血糖のコントロールをしっかりやると、網膜症の発症を予防することが可能です。発症した場合も、血糖コントロールがきちんと行われている人は、進行が遅く、途中で進行が止まり安定することさえしばしばあります。高血糖、血糖値の極端な変動、高血圧、高脂血症、喫煙、腎症、妊娠などは、進行を早める危険因子です。40、50歳以下の比較的若い人は進行が速いので、注意を要します。
 進行した網膜症ではレーザー治療や手術が必要になりますが、いずれも失明や進行を防ぐための治療で、見え方を良くするための治療ではありません。


糖尿病による眼科受診では

 糖尿病と言われたら、網膜症について十分理解しておくことと、時々眼を診察してもらうことが重要です。網膜症は小さな眼底出血から始まるので、診察には、散瞳(さんどう)(目薬で瞳を開くこと)して、詳しく眼底を観察する精密眼底検査が必要です。眼科での精密眼底検査で網膜症の詳しい状態、発症や進行の有無を知ることができます。また、網膜症の状況や全身状態で次の眼科検診の時期が決まります。 現在、進行した糖尿病網膜症で失明や失明の危機にある患者さんは、糖尿病患者全体の2割くらいと推定されています。失明に至らなくても仕事や日常生活に支障を来す本当に忌まわしい病気です。失明の危険から眼を守るために、眼科での定期検診をきちんと受けること、内科医と眼科医が連携して治療に当たることが重要です。