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2008年 「まいらいふ」7月号

若年者の血尿で考えられるIgA(アイ・ジイ・エイ)腎症
高校1年生の長男が学校検診で血尿が出ていると言われました。再度検査しましたが、同じ結果でした。50歳になる叔父が20年前から血液透析を受けており、長男もそうならないかと心配です。(40歳 女性)

IgA腎症とは

 血尿を来す疾患はいろいろありますが、若年者の血尿では?gA腎症を考える必要があります。ほとんどの場合、自覚症状はなく、尿検査異常で発見されます。まれに風邪をひいた後にコーヒー色の尿が出る場合もあります。以前は予後の良い疾患と考えられていましたが、現在では患者さんの4割近くで腎(じん)機能が低下して腎不全になり、血液透析や腹膜透析が必要になる、予後の良くない疾患と考えられています。特に、蛋白(たんぱく)尿が一緒に出ている場合や、血圧が高い場合は腎不全に移行しやすいといわれています。


原 因

 ?gA腎症は腎炎の一種で、その原因はまだ分かっていないのですが、扁桃(へんとう)での免疫系の過剰反応が誘引になっていると考えられています。免疫反応の過程で作られた?gAという免疫グロブリンが、腎臓の糸球体と呼ばれるところに沈着して異常を来します。比較的頻度の高い疾患で、日本人の慢性糸球(しきゅう)体腎炎の約半数を占めるといわれています。


診 断

 確定診断を行うには、腎臓に針を刺してその組織の一部を採る腎生検という検査が必要です。腎生検はリスクを伴うので1週間ほどの入院が必要です。採取した組織の顕微鏡標本を作って、?gA沈着の有無を見たり、PASという特殊な染色を行ったりして確定診断や活動性判断を行います。


治療法・改善策
熊本大学大学院
医学薬学研究部
腎臓内科学分野
准教授
江田幸政

 その結果、進行の恐れが少ない人の場合は経過を観察します。蛋白尿を伴う人、血圧が高い人、既に腎機能低下が見られる人では治療が必要です。生活指導、蛋白質制限食などと共に、以前から抗血小板療法が行われてきました。またある種の降圧薬は腎糸球体の内圧を下げて腎臓を保護する作用があるので積極的に使用しています。
 最近、扁桃摘出術を行い、その後でステロイドホルモン投与を行う治療が全国で行われるようになりました。ステロイド治療には1年間を要しますが、かなり有効な治療法です。発症から3年以内で腎機能が70%以上残っている場合には特に効果があるようです。80%近い症例で血尿や蛋白尿がなくなり治癒しますので、当科でも積極的にこの治療法に取り組んでいます。