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2008年 「まいらいふ」4月号

「PSAが高い」と言われました
血液検査でPSAが高いと言われました。PSAとはどういうものですか? PSAが高いと前立腺がんの可能性があるとも聞いたのですが、その可能性は高いのでしょうか。(57歳 男性)

PSAとは

 PSA(前立腺特異抗原)は前立腺で作られ、精液の中に分泌されるタンパク質分解酵素の1つです。どろどろした精液をさらっとした液体に変え、精子が泳ぎやすくし、最終的に受精しやすくしています。
 前立腺がんの診療において、PSA検査は重要なものです。PSAが発見される以前の検査は、受診者のおしりの穴から指を挿入し、直腸の内壁を通して前立腺の表面を触知していました(直腸診と言い、今でもがんの広がりを確認するなどの意味で行います)。
 がんの場合、前立腺の正常組織が破壊され、PSAが血液中にもれ出て、血液でのPSA濃度が高まり、がんと診断されるわけです。正常の前立腺でのPSAの濃度は、血液でのPSA濃度の約10万倍(1,000〜100万倍)。正常前立腺細胞内で非常に高濃度のPSAは、がんでなくとも何か細胞に異常が起こればもれ出てきます。前立腺に炎症や肥大があればもちろん、射精や前立腺の触診でももれ出ると言われています。また、年を取れば少しずつ前立腺から血液中にもれてきます。
 また、同じ値のPSAでも、年齢や前立腺の大きさによる違いによってがんの可能性の高さは異なります。


PSA検査の問題点

 PSA検査を考える時、<前立腺がん><前立腺炎><前立腺肥大症> <加齢>など、考えなければいけない要因がいくつもあります。
 さらに「PSAが高い」という問題をいっそう複雑にする多くの問題点があります。
 通常PSA値が4.0ng/ml(施設によっては10ng/ml以上)であれば、確定診断のために前立腺生検の実施を考えます(前立腺生検はおしりから前立腺組織を採取して行います)。しかしこの場合のがん陽性率は25〜30%です。ということは10人中7、8人は検査を受けてもがんではないと診断されることになります。
 一方、前立腺がん患者の25%はPSAが4.0ng/ml未満であり、PSA検査では見つからない前立腺がんの患者さんが4人に1人いるのです。PSAがどんなに有益であっても、血液を取ってそれだけで、がんかそうでないか明確に区別することはできないということです。


解決策
熊本大学
医学部附属病院
泌尿器科
講師
和田孝浩

 泌尿器科の医師たちも、できるだけ患者さんたちに負担をかけずに、がんかそうでないか区別するための工夫をしていますが、最終的には前立腺生検という組織を採取する検査に頼っているのが現状です。しかし、その前にPSAを再び検査し(保険の問題もあるので再検の回数や検査間隔には制限もありますが、炎症やそのほかの急性の病気ではそれが治ればPSAは正常に戻ることも多いのです)無意味な負担をかける生検を減らすように努力もしています。
 現状では泌尿器科、特に泌尿器がんの複数の専門家に相談(セカンドオピニオンを得る)をしてでも、しっかり納得して検査や治療を進めていく以外、方法はないようです。