まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」2月号

足の裏のホクロは癌化しやすいと聞きましたが、本当でしょうか?
「足の裏のホクロはがんになりやすい」とテレビでやっていました。足の裏を見てみたら、これまでなかった黒い斑点がありました。がんではないかと心配です。 (48歳 女性)

足の裏のホクロとは

 ホクロのがんとおっしゃっているのは、悪性黒色腫(メラノーマ)という皮膚がんのことと思われます。メラノーマは、皮膚がんの中で最も悪いがんの一つです。アメリカでは、毎年8000人くらいの方がメラノーマで亡くなっているという統計もあります。発生数は、人種による差が大きく、日本人では、おおよそ毎年5万人に1人発生するとされています。熊本県の人口を184万人とすると、計算上、年間37人の患者さんが発症することになります。また、欧米人のメラノーマが顔や体にできやすいのに対して、日本人のメラノーマは、約40%が足の裏や手のひらにできるとされています。つまり、熊本県では、足の裏や手のひらのメラノーマの患者さんが、毎年15人ほど発生する計算になります。
 一方、日本人で足の裏にホクロのある人は決して珍しくありません。熊本大学医学部の皮膚科・形成外科の調査では、約10%の人に足の裏にホクロがあることが分かっています。そうすると、熊本県では、約18万人に足の裏にホクロがある計算になります。1年間の足裏メラノーマの発生数が15人程度ですから、足の裏にホクロのある人のうちメラノーマになる危険率は、0.01%程度ということになります。


診断

 危険率0.01%ということは、99.9%以上の足の裏のホクロは大丈夫ということを意味していますが、診断を決めるには、ホクロを切り取って顕微鏡組織検査をする必要があります。足の裏の皮膚を切って縫うわけですから、痛みもあり、多少の傷跡も残ります。大変負担の大きな検査ですから、すべてのホクロをこの検査にかけるわけにはいきません。よくしたもので、悪いやつは悪いなりの顔をしています。皮膚科の専門医が見れば、そのホクロがいいものか悪いものかは、肉眼でおおよそ診断がつきます。その上で、怪しいものだけを組織検査にかけるという手順で十分だと思います。


ダーマスコピー検査
熊本大学大学院
医学薬学研究部
皮膚機能病態学分野
  
講師
井上雄二

 さらに最近では、皮膚の表面を10倍程度拡大して観察できる、顕微鏡に似たダーマスコピーと呼ばれる診断機器が普及してきました。ダーマスコピーで見ると、ホクロの表面は形や色がさまざまです。その色の付き方などで、悪性か良性かは、かなり高い確率で診断がつきます。この検査は痛みもなく、短時間で済みます。また、保険もききますので、検査料も安くて済みます。がんの心配をされている場合には、ダーマスコピー検査を受けることを、まず検討されるといいと思います。