まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」1月号

身体症状が前面に出る「仮面うつ病」
動悸(どうき)、めまい、倦怠(けんたい)感が続くため、いくつかの病院で診てもらったら「仮面うつ病」かもしれないと言われました。どんな病気なのですか。(62歳 女性)

仮面うつ病とは

 身体の症状が前面に出てくるうつ病のことです。うつ病は決してまれな病気ではなく、ストレスがかかれば誰でもなる可能性がある病気です。約15人に1人は生涯に一度はうつ病にかかるという調査結果があり、女性の方が男性より約2倍かかりやすいとされています。うつ病の場合、免疫系、自律神経系や内分泌系などを介して、身体面の変調を来すことがよくあります。患者さんの多くが、最初は専門科でなく、内科などほかの診療科を受診しているという調査結果もあるように、身体の病気と間違われやすい場合があるのです。


症状

 嫌なことや悲しい出来事があれば、誰でも落ち込みます。通常はそれ以上深刻になることはなく、自然と回復します。単に落ち込むだけでなく、日常生活に支障を来すほどの状態が一定期間にわたって続くのがうつ病です。「気分の落ち込み・憂うつ感」と「仕事や趣味など、普段やっていたことができない、楽しめない」が2大症状です。そのほかに、不眠、食欲不振、さまざまな体調不良、疲れやすさ、おっくう感、集中できない状態、イライラ感、強い罪責感、死にたい気分などがあります。これらのうち、身体症状が目立ち、気分の落ち込みなど精神症状が目立たない場合を「仮面うつ病」と呼びます。身体症状は、倦怠感、不眠、食欲不振、頭重感などさまざまです。内科や婦人科では、自律神経失調症や更年期障害などと診断されることが多いようです。


原因

 原因はまだよく分かっていません。任せられない、几帳面、周囲に気遣うなどの性格傾向に、過度の心理社会的ストレスが重なり発症するという考え方が一般的です。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が治療薬として有効なことから、脳内のセロトニンという物質が不足していることが推測されています。


予防・治療法
熊本大学
医学部附属病院
神経精神科  
講師
藤瀬 昇

 治療は、薬と対話、休養が中心になります。近年、副作用の少ないSSRIが処方できるようになり、うつ病の薬物治療は格段に進歩しました。しかし、薬さえ服用していればすぐに良くなるというものでもありません。まずは休養が必要です。無理な気晴らしや安易な励ましは逆効果で、本人の話にじっくり耳を傾け、うつ病に至った背景について周囲が理解することも大切です。また、自分なりのストレス対処法を身に付けておくことが予防になります。うつ病は早期に発見できれば十分治療可能な病気ですが、放置しておくと長引いてしまうこともしばしばです。まずはかかりつけ医に相談してください。