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2008年 「まいらいふ」12月号

「触れない乳がん」とは、どんながんですか?
最近、テレビや新聞で、乳がんが増えていて早期発見が勧められていることをよく目にします。その中で「触れない乳がん」が増えていると知りました。それはどんな特徴があり、どのようにして見つけることができるのですか?(42歳 女性)

「触れない乳がん」とは

 乳がんの主な症状は乳房のしこりです。自己検診や医師の診察でしこりを見つけることができず、検査で見つかる乳がんを「触れない乳がん」と呼んでいます。しこりは、乳がんがある程度大きくなって初めて気づくものです。「触れない乳がん」の多くは、しこりを作る前の極めて早期の乳がんです。つまり、「触れない乳がん」は「しこりを触れる」乳がんより早期の乳がんであることが多いのです。


特徴

 極めて早期の乳がんが多いことが特徴です。中でもマンモグラフィーで石灰化という所見のみで見つかる乳がんの多くは非浸潤がんです。乳がんには非浸潤がんと浸潤がんがあります。乳がんの多くは乳管を形作る乳管上皮細胞からできます。このできたばかりの乳がんが乳管の中だけにとどまっていると転移しません。この段階のがんを非浸潤がんと呼びます。
 一方、がんが進行するに伴い乳管の外まで成長すると浸潤がんとなります。乳管の周囲には血管やリンパ管があり、浸潤がんでは血管やリンパ管を通して転移を起こす可能性が高くなります。
 つまり、マンモグラフィーなどの検査のみで見つかるがんの多くは非浸潤がんです。まだ転移しにくい段階のがんが早期に発見できるのです。マンモグラフィー検診が導入されてから、早期乳がんや非浸潤がんの発見比率が高まっています。


見つけ方(検査法)

 乳房専用のレントゲン装置であるマンモグラフィーによる乳がん検診を受けましょう。この検査では、腫瘤(しゅりゅう・しこり)や石灰化などを検出し、がんの疑いがあるかどうか判定します。石灰化は、乳がんの一部が石のように硬い成分に変化したもので、これをレントゲンで検出します。乳房超音波検査(エコー検査)も、若い女性や乳腺が発達している場合は併用して行うことがあります。検査で異常が疑われた場合は、さらに精密検査を行います。再度マンモグラフィーや超音波検査を精密に行い、場合によっては乳房MRI検査やCT検査を行います。最終的には乳がんが疑われる部分を穿刺(せんし)吸引細胞診やマンモグラフィーを撮影しつつ針生検(組織検査)を行い、病理学的に診断します。


治療法

 通常の乳がんと同じように、全身への転移の有無を調べたのちに、主に手術を行います。「触れない乳がん」の多くは非浸潤がんですが、温存手術の割合が高くなるわけではありません。乳房全摘が必要な方もおられます。全摘後に乳房再建を行うことで乳房喪失感を和らげる方法もあります。薬物療法は進行状態によって異なります。


アドバイス
熊本大学
医学部附属病院
乳腺・内分泌外科 

助教
山本 豊

 日本人の乳がんは年々増加し、現在、24人に1人は乳がんにかかる時代です。乳がんの治療法は進歩し、治癒率も改善しています。しかし、乳がんによる死亡を防ぐには早期発見に勝るものはありません。しこりや乳頭から血液などが出るなどの症状がある場合、すぐに乳腺外科などの専門科を受診されることをお勧めします。また、40歳を超えたら、症状がなくても2年に1度のマンモグラフィー検診と日ごろの乳房自己検診をお勧めします。