まいらいふのページ

2010年 「まいらいふ」4月号

小児科を卒業するとき

何歳までという 決まりはない 小児科受診

「何歳まで小児科を受診してよいのか」と聞かれることがあります。赤ちゃんから保育園・幼稚園児、小学生などが来ている小児科に、中学生や高校生が行くのはちょっと抵抗があるかもしれません。
 小児とは、一般には生まれたばかりの赤ちゃんから15歳、つまり中学生までの子どもを指します。そのため、小児科にかかるのも15歳までと考えられることがあるようです。しかし、小児科を受診するのは何歳までという決まりはありません。
 最近は、予約制になっている病院も増えたので、待合室にいる子どもも少なくなりました。中学生、高校生が来て場違いに感じることもあまりないようです。


子どもによって違う 小児科受診の卒業

 子どもは大人をただ小さくしたものではありません。子どもは常に成長し続けるので、年齢によってかかりやすい病気も違います。こころの発達や思春期特有の病気なども成長に合わせて診ていくため、成長が終わるまでは小児科を受診した方が良い場合が少なくありません。
 また、子どもの時から慢性の病気で受診していると、成人してからも小児科の受診が続くことがあります。特に生まれつきの病気の中には、専門家が少なく小児科が主に診察を続けているものがあります。子どもが「もう小児科に行くのは恥ずかしい」と思っていても、これまでと同じ病気で受診するのであれば、かかりつけの病院に行く方が検査も少なくて済むかもしれません。
 このように、小学生、中学生、高校生のころに小児科を卒業する子どもも、その後もしばらく受診を続ける人もいます。小児科を卒業する時期はそれぞれに違うのです。


病気や 体質記した 母子手帳を 子どもに
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 小児科を卒業した後は、子どものころにかかった病気、体質などを自分で説明する必要があります。そんなときに役に立つのが母子手帳です。
 母子手帳は小学校入学前までの成長や健診、予防接種やかかった病気などを記録することになっています。しかし多くの場合は3歳児健診の後は真っ白になっているのではないでしょうか。子どもの病気や体質などで保護者が子どもに知っておいてほしいと思うことは、母子手帳に記入しておくとよいでしょう。
 そして、子どもが自分一人で病院に行くようになったら、母子手帳を子どもに渡す時期だと思います。母子手帳を見せながら、子どもの成長や病気に対する保護者の考え方を教えてあげてください。小児科を卒業するのも本当はそのころが適当なのだと思います。
 病気が多くて大変だった子どものことは、小児科を卒業した後も医者は気になっているものです。成人、結婚などの人生の節目の挨拶状が、かかりつけだった小児科医に届いたら、こんなにうれしいことはありません。


Q&A
3歳の長男は超未熟児で生まれ、現在、脳性マヒの診断を受けています。訓練に通っていますが、手足に余計な力が入ってまだ歩けません。言葉もはっきりしません。このまま障がいが残ってしまうと考えると不安です。
熊本大学医学部附属病院
新生児学寄付講座
特任教授 三渕浩

私もいつも考えている問題です。医学がどんなに進歩しても、一部の子には障がいが残ってしまいます。施設に通院し訓練を受けていらっしゃるのであれば、それを続けていくことが大切です。現在の方法以外に根拠のある特別な訓練方法や薬物があるわけではありません。訓練の効果は目に見えて出るものではありませんので、あせる気持ちや不安も理解できます。
 重度の障がいを持ったお子さんを育てながらも、いつも幸せそうな家族がいらっしゃいます。そのような家族の共通点は、家族が協力的であること、いろんな施設や制度を利用し、障がいを隠そうとせず、あまり気にしていないように見えること、その子のできるところ、良いところ(たまに笑ったように見える顔など)を喜んでいること…のように思います。
 「障がい学」という学問分野があるのですが、その中で、障がいがもたらすことを良い方向に解釈し直すことの重要さなどがいわれています。 誰もがそのように受け入れられるわけではありませんが、こういうふうにできたら、そう信じることができれば、少し楽になれるのではないでしょうか。