まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」9月号

子どもの気管支ぜんそく

気をつけたい季節の変わり目

 秋が近づくと、ぜんそく発作を起こす子どもが増えてきます。季節の変わり目や天気が不安定な時に多くなるようです。子どものぜんそくでは、息を吐くときにヒューヒュー、ゼイゼイという音(喘鳴(ぜんめい))が聞こえます。
 体の中でぜんそくの発作が起こっているのは、口や鼻から吸った空気の通り道の奥の方、肺の中の気管支と呼ばれる部分です。気管支では、ダニやほこり、カビなどによって、粘膜が刺激されて炎症が起きます。慢性の炎症が起こると、粘膜が腫(は)れ、気管支の周囲にある筋肉が反応して縮むことで、空気の通り道が狭くなります。また、たんが多くなり、空気の通り道が広がりにくくなります。このようにして呼吸が苦しくなり、ヒューヒューという音が出たりします。


発作を減らす予防も大事

 ぜんそくの症状としては、呼気のヒューヒュー、ゼイゼイという音のほかに、息を吸うときに首筋や胸がくぼむ陥没呼吸や、息を吐く時間が長くかかる呼気延長などがあります。きつくて横になれない、顔色が悪くなるなどは、直ちに病院で治療が必要なサインです。
 子どものぜんそくでは、発作が起きたときすぐに行う治療と、発作を減らすための予防が大切です。ほこりの少ない環境を作り、内服薬や吸入薬を使って炎症を抑えます。
 環境の注意点としては、掃除をしやすいように家具や道具を配置する、高密度繊維布団カバーを使う、じゅうたんを使わない、押入れや浴室のカビ対策を行う、家の中を禁煙にする、などが挙げられます。
 内服薬としては、気管支を広げる薬、炎症を抑える薬、アレルギー反応を軽くする薬などが使われます。発作のときの薬と予防の薬では使い方が違うので、かかりつけ医に相談しながら使ってください。吸入薬も、発作の時に使うものと、普段から予防のために使うものとがあります。ぜんそくをくり返す場合は、吸入ステロイド薬による治療を長く続けると、治療の効果が高いことが分かってきました。


治療目標は普段通りの生活
熊本大学医学部附属病院
小児科
講師 中村公俊

 アレルギーの体質は、ぜんそくの起こりやすさと関係していると言われます。その体質の目安として、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、両親が子どもの時のぜんそくなどが参考になります。子どものぜんそくの約8割は3歳までに起こります。そして小学校高学年ごろまでには次第に軽くなることが多いです。体が大きくなり肺機能の成熟が進み、たんを出しやすくなる、空気が通りやすくなるなどが理由と考えられています。
 水泳やクラブ活動などで体を動かし、内服薬や吸入薬を使いながら、予防と早期の治療を行います。そしてぜんそくが起こりにくくなる時期まで、幼稚園や保育園、学校などで普段通りの生活を送ることを治療の目標とします。


Q&A
子どもが嘔吐(おうと)下痢(げり)症にかかったときの家庭での対処法を教えてください。
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
新生児学寄附講座 
特任教授 三渕浩

 ウイルス性の感染性胃腸炎による嘔吐下痢症が最も多いですので、それに対する処置法をお答えします。
 突然の嘔吐で始まり、後から下痢がしばらく続くといった経過をとることが多いようです。嘔吐は1〜2日で治まることがほとんどですが、下痢は1週間以上続くこともあります。自然に治る病気ですが、脱水にならないようにすることが重要です。
 点滴をすればいいと思われるかもしれませんが、点滴事故(血管確保時のトラブル、留置針固定のトラブル、薬物の過誤、皮内漏出(ろうしゅつ)など)が起こる危険があります。点滴しないでいいように、家庭での水分、塩分、糖類の補給が大事です。従来、良いとされていたお茶や湯冷ましでは、糖類、塩分の補給ができません。またスポーツドリンクでは塩分が少なく糖類が多いため、かえって吸収が悪くなったり、胃腸の機能を低下させたりします。そのあたりのことが医学的に解明され、経口補液剤が開発されました。軽症脱水では点滴と同じ効果があり、しかも点滴事故の心配はありません。市販されていますが、家庭でも作れます。

<家庭で作る経口電解質液>
塩23g(小さじ半分程度)、砂糖40g(大さじ4杯半)、
水1,000 ml、レモンの絞り汁でカリウムの補充と
香りをつける。

 飲ませるコツは、体重にもよりますが、少しずつちょこちょこ与えてください。飲まない子には市販のゼリー状タイプがうまくいくこともあります。日ごろから、かかりつけの小児科の先生に相談しておくといいでしょう。