まいらいふのページ

2009年 「まいらいふ」1月号

子どもを連れた旅行

行き先、休憩場所の下調べを

 年末年始には子ども連れで旅行をする方がいらっしゃるかもしれません。赤ちゃんを連れた初めての遠出になる場合もあると思います。子どもを連れた旅行では、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
 子どもの体調が変わりやすいのはよく経験することです。旅行中は環境が変わることで興奮したり、体調を崩したりしがちです。必要な時に休憩、トイレ、おむつの交換などができるよう、休憩場所の下調べができていると安心です。
 小さな子どもを連れて行ってよい場所かどうかも悩む点です。保護者が行きたいところではなく、赤ちゃんOKの宿や店など、子ども連れを歓迎してもらえるところを選ぶのも一つの方法です。いつも遊んでいるおもちゃ、使い慣れているタオルなどを持っていくと、環境が変わるストレスが減るかもしれません。


できるだけ避けたい長距離の移動

 また、「いつから赤ちゃんを飛行機に乗せてよいのか」と尋ねられることがあります。多くの航空会社では生後8日目以降であれば搭乗することはできます。しかし、赤ちゃんにとって無理のない移動を考えると、首がすわる3—4カ月目以後が望ましいでしょう。
 飛行機では、離着陸の時に耳が痛くなることがあります。痛みは耳の鼓膜の内側と外側との気圧が急に変わるために起こります。鼓膜の内側と口の奥は耳管という管でつながっているので、泣いたりあくびをしたりして口を大きく開けると、管が開いて空気が通り、痛みが取れます。赤ちゃんの場合は哺(ほ)乳したり泣いたりすると、その拍子に空気が通って機嫌が直ることがあります。
 首がすわっていない赤ちゃんは、車を使った長時間の旅行も難しいです。どうしても移動が必要な場合には乳児用のチャイルドシートを利用してみてください。うまくいくと眠ってくれますし、安全です。しかし、機嫌が悪いとせっかく用意したシートを使わずに、ずっと抱っこしながらの移動になるかもしれません。そのようなことを考えると、赤ちゃんを連れた長時間の移動はできるだけ避けた方が無難です。


母子健康手帳や薬の手帳なども持参して
熊本大学医学部附属病院
小児科
助教 中村公俊

 もしものことで旅先で病院を受診する時には、これまでにかかった病気や予防接種の記録、飲んでいる薬などをきちんと伝えることが大切です。健康保険証のほかに、母子健康手帳や薬の手帳などがあれば便利です。どこを受診すればよいかわからないときには、宿泊先に相談する、携帯で休日当番医を検索するなどの方法で調べることができます。
 このような休日・時間外の診療はとりあえずこの1—2日を乗り切るためのものです。自宅に戻ったら、もう一度かかりつけ医に相談してください。


Q&A
鳥インフルエンザの流行が心配されています。今年は大丈夫でしょうか?
熊本大学大学院
医学薬学研究部 
小児科 
准教授 三渕浩

 鳥インフルエンザは、H5N1型(A型インフルエンザ)に分類され、罹患すると重症の肺炎、多臓器不全を起こし、60—70%が死亡する恐ろしい病気です。5—6年前からアジアを中心に、約400人の感染が報告されていますが、現在のところ、人から人へ容易に感染するウイルスは出現していません。
 これまで、いくつかの人から人への感染事例が報告されていますが、2007年12月の中国での家族内発症事例について、詳しい分析が最近報告されました。最初の患者さんは亡くなられましたが、次に発症した家族は治療により軽快し、また無防備に接触した91人は、抗インフルエンザ薬の予防内服を受け、そのうち2人が発症しましたが、軽症でした。これらの結果から、現時点では人から人へは感染しにくいと考えられています。
 しかし、インフルエンザウイルスは容易に変異を起こしますので、人から人に感染しやすい変異型が出てくれば、世界大流行が起き、日本でも何十万人という人が亡くなるだろうという予測もあります。また、いつそのような変異型が出てもおかしくないと考えている学者もいます。
 では、われわれはどうすればいいのでしょうか? 現在、ワクチンの開発や抗インフルエンザ薬の準備は進んでいます。通常の風邪対策を常に心がけ、現行のインフルエンザ予防接種を受け、いざという時には入手情報をよく整理し、冷静に落ち着いて行動することが重要だと思います。