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2010年 「まいらいふ」2月号

父親として見守っていること、息子を大事に思っていることが全然理解されていないことが分かり、私自身もショックでした。

今回のご相談 熊本市 F 43歳

 受験生(中3・男子)を持つ父親です。受験に向けての進路指導などには妻が出席し、息子の様子や成績などは聞いていました。2学期終盤、思うように成績が上がらないため、志望校をかえざるを得ない状況だと聞き、息子を激励しました。男親として、社会に出るための準備段階である高校の大切さや、そこに向かって必死に頑張る今の時期が後々の自信につながることなどを伝えたのですが、猛反発を受けてしまいました。私が父親として見守っていること、息子を大事に思っていることが全然理解されていないことが分かり、私自身もショックでした。父親は、人生のナビゲーターでありたいと考えてきたのですが…。


結果の出ない現実に傷ついている今、本人の現実受容を見守り「君は君らしく」のメッセージを
臨床心理士
植村照子

向陽台病院
リハビリテーション部長
熊本県スクールカウンセラー

 「どこの学校に行くか」ではなく、将来、社会に出て行くことを見据えて「この時期に頑張ることが大切」と伝えたかったのですね。息子さんがその意義を分かっていないと思われてのことだと思います。しかし、本当にそうでしょうか。  自分の実力で立ち向かうしかない受験期に成績が上がらない現実。息子さんは、「どの高校に行くのか」がすべてではないにしても、満足行く結果を出せない「がんばれない自分」に失望し、自尊感情が傷ついているのではないでしょうか。  その上、思春期特有の反抗心が、お父さんの「がんばることが大事」というメッセージを、「がんばれない子はダメな子」と言われているようにとらえ、反発してしまったのかもしれませんね。しかし、愛しているからこそ、大事だからこそ本人にとって嫌な、耳の痛いことを言う親の真意は、必ず伝わるものです。また、親子だからこそ遠慮のない言動で傷ついたり、傷つけられたりするのは、ある意味仕方のないことではないでしょうか。ですから、お父さんもあまりショックを受けず、これからもしっかりとかかわってほしいと思います。  息子さんは今、「かえた志望校を目指していく」という新しい現実を受容していかなければなりません。それができて初めて「社会でがんばるため、今がある」というところにつながるでしょう。ですから、人生のナビゲーターとして「どこに行ったって、君は君らしくやっていけばいいんだよ。困ったらいつでも相談してほしい」というメッセージを伝えてほしいと思います。