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「あれんじ」 2011年11月5日号

【見る・知る・感じる 熊本まつり探訪】
球磨神楽

開催日:11月24日(木)
開催場所:槻木(つきぎ)菅原神社 球磨郡多良木町槻木716

九州自動車道人吉ICから国道219号、県道143号を車で1時間
(問)多良木町教育委員会
☎0966(42)1267

(問)天草市河浦支所☎0969(76)1111

幻想的な世界つくり出す天井から舞う紙吹雪

熊本県内で神楽というと、一般的には波野の「岩戸神楽」(阿蘇市)が知られています。しかし、人吉球磨地方には「球磨神楽」という神職の間だけに継承されてきた珍しい神楽が残っています。
 球磨郡多良木町の山間にある槻木地区の槻木菅原神社では、毎年11月24日の夜と翌日の朝、「球磨神楽」が奉納されます。
 舞は一人舞から四人舞まであり、以前は33番まであった演目が、現在は9番まで舞われています。神楽には、静と動≠ェ組み込まれ、おはやしに合わせ飛んだり跳ねたりする軽快な動きが特徴的です。
 中でも一番の見所は、7番の「三笠の舞」。拝殿の天井からつるされたヤツジメという白い切り紙を付けた8本の縄を持ち、太鼓や笛の音に合わせ舞います。舞によって縄がねじれたり、ほどけたり。秋の夜、天井からひらひらと紙吹雪が落ちてくる様は幻想的です。


雨乞い、疫病退散願う舞国選択無形民俗文化財に指定

 「球磨神楽」の起源は明らかではありませんが、文明4年(1472)、相良藩主・為続(ためつぐ)が人吉市の青井阿蘇神社(人吉市上青井町)で、雨乞い祈願の際に奉納したという記録が残っています。天文9年(1540)の疫病が流行した際には、数百番の神楽を納めたという記録もあるそうです。
 現在、国選択無形民俗文化財に指定されており、県内でこのスタイルの神楽が残るのは人吉球磨地方だけだと言われています。


【教えてください】「地域による神楽の違いは?」

 神楽には、今回紹介した槻木地区に残る神職神楽=「球磨神楽」のほか、波野神楽に代表されるような日本の歴史を演劇風に表現した「岩戸神楽」、また人に神が降りてくる「荒神神楽」など、いろんな様式のものがあります。
 神楽とは神座(かみくら)≠ニいう言葉が語源という説があり、もともとは、神の降りて来る座を清めるために始まったと言われています。この神楽という言葉が残っているのは、実は熊本県が南限です。鹿児島以南では、神楽ではなく神舞(かんめ)≠ニ呼ばれています。
 日本各地に残る、さまざまなスタイルの神楽の違いを見てみるのも興味深いものです。(談)

熊本大学60年史編纂室長(前熊本大学大学院社会文化科学研究科民俗学教授)
安田 宗生氏