すぱいすのページ

トップページすぱいすのページ「あれんじ」 2018年6月2日号 > 適切な治療で神経痛の後遺症を防ぎたい 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

「あれんじ」 2018年6月2日号

【元気!の処方箋】
適切な治療で神経痛の後遺症を防ぎたい 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

 「痛みがひどかった」「水ぶくれができた」など、かかった人から断片的に話を聞く「帯状疱疹」。いったいどんな病気なのでしょう。

 今回は、誰もが一度はかかるという「帯状疱疹」についてお伝えします。

【はじめに】誰もが一度はかかる病気

 帯状疱疹にかかると、まずヒリヒリとした痛みが出てきます。2〜3日たってから、その場所に発疹が出てきて、帯状疱疹と診断できます。

 適切に治療をすれば、ほとんどの場合は1〜2週間で完治します。ところが症状が強い場合、あるいは適切に治療をしないで放置していると、「帯状疱疹後神経痛」といって、ひどい痛みに一生悩まされることにもなりかねません。

 帯状疱疹は、誰もが一度はかかる病気です。この機会にきちんと知ってほしいと思います。


【原因】

■水痘が治っても体の奥に潜む「水痘・帯状疱疹ウイルス」

 帯状疱疹は「水痘・帯状疱疹ウイルス」によって起こります。このウイルスはその名の通り、水ぼうそう(水痘)と帯状疱疹という2つの病気を起こします。

 ほとんどの人は、子どもの頃に水ぼうそうにかかります。水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が強いので、幼稚園などで流行した際にかかることが多いです。

 ヒトには、「免疫の二度なし現象」つまり、1回かかったウイルス感染症には二度とかからないという力があります。麻疹(はしか)や風疹なども1回かかると、二度とかかりません。水ぼうそうも同じです。

 ところが、水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後、神経節という体の奥深くに潜んでしまいます。

■免疫力の低下により発症

 そして、一生に1回、疲れやストレスで免疫力が落ちたときに、このウイルスが神経節から皮膚に出てきて、帯状疱疹を発症させます。

 かぜをひいている方、免疫を抑える薬を飲んでいる方、がんにかかっている方などは、免疫力が低下しているので、帯状疱疹を発症しやすくなります。免疫力が落ちてくる高齢者に多いですが、若い方にも発症します。

 また、基本的には一生に1回しか発症しませんが、まれに2回以上かかる方もいます。


【症状】最初に痛み その後、発疹、水ぶくれに
【図】帯状疱疹の症状

 最初に痛みが出ます。2〜3日後に痛みの出た部位に赤い斑点が出て、小さい水ぶくれ(水疱=すいほう)になり、帯状疱疹と診断できるようになります(図)。

 症状は顔、体、腕や脚、どこにでも出てくる可能性があります。ただ、神経節から神経をたどってウイルスが皮膚に出てくるので、神経に沿って帯状に痛みや発疹が出ます。


体の片側だけに出るのが特徴

 そして、体の左右どちらか片側だけに出るというのが特徴です。

 痛みだけで発疹がない時期には診断が難しい場合があります。とても痛みが強い場合は、「心臓発作ではないか」と救急車で病院に来る人もいるくらいです。

 水疱は次第に破れて、かさぶたになり、2週間くらいで治っていきます。発疹の症状が強い場合は、跡形を残してしまうこともありますが、必ず治ります。


痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」に注意

 問題は、痛みです。高齢の方、免疫力が低下する病気を持っている方、後で説明する抗ウイルス剤による治療が遅れてしまった方などでは、後遺症として痛みがずっと残ってしまう場合があります。これを、「帯状疱疹後神経痛」といいます。一度なってしまうと、治るまでにかなり時間がかかる神経痛です。


【治療】抗ウイルス薬の内服を1週間 早い治療開始を

 神経痛などの後遺症を残さないためには、どうしたらいいのでしょうか?

 一番大切なのは、特効薬である抗ウイルス薬内服でいかに早く治療を開始するか、です。痛みだけの時期や、赤い斑点が出始めたばかりの時は診断が難しいこともあります。しかし、典型的な水疱が出てきた場合、皮膚科専門医にとって診断は比較的容易です。

 診断がついたら、抗ウイルス薬を1週間内服します。

 以前の抗ウイルス薬は、高齢者など腎臓の機能が低下している方には減量して内服するなどの注意が必要でした。しかし、最近では、腎臓の機能が低下している方でも安心して内服できる薬剤もあります。

 また、痛みに対して痛み止めの内服を、皮膚の症状に合わせて塗り薬を使用します。


【かかったら気を付けたいこと】

◎赤ちゃんなどとの接触は避けましょう

 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こりますので、水ぼうそうにかかったことのない方にはうつる可能性があります。赤ちゃんや妊娠されている方との接触は避けましょう。

◎体をしっかり休めましょう

 疲れやストレスで免疫力が落ちているときに発症するということは、帯状疱疹を発症したときは、「体が休むことを求めている」ともいえます。睡眠や栄養を十分とって、養生しましょう。無理は禁物です。

◎患部は冷やさず、温めましょう

 痛みがあるので、患部を冷やしてしまう方がいます。帯状疱疹の痛みは神経痛なので、むしろ温めた方が和らぎます。「お風呂に入ってはいけない」と思ってしまう方もいますが、むしろ患部は洗って清潔にし、お風呂につかって、患部も温めた方がよいのです。


【終わりに】早めの受診が大事 ワクチン接種の検討も

 どんなにひどい発疹が出ても、多くの場合1〜2週間でかさぶたになり、治ります。痛みもそれにつれて治まってきます。

 しかし、帯状疱疹後神経痛を残してしまうと、やっかいです。とにかく帯状疱疹を疑ったら、すぐに皮膚科の診察を受けることです。

 また、水ぼうそうのワクチンを打って、帯状疱疹の発症を予防できる場合があります。高齢者の方で、まだ帯状疱疹にかかったことがない方は、ワクチンの接種について、かかりつけ医に相談するとよいかもしれません。


執筆いただいたのは
熊本大学医学部附属病院
皮膚科・形成再建科
福島 聡 准教授

専門は、皮膚悪性腫瘍、アトピー性皮膚炎
・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
・皮膚悪性腫瘍指導専門医
・日本アレルギー学会認定アレルギー専門医
・日本がん治療認定医機構がん治療認定医