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「あれんじ」 2018年3月3日号

【元気の処方箋】
子どもの精神面、行動面の問題について 成長・発達の過程で気を付けたいこと

 周りとのコミュニケーションや日常生活に苦手感があり、生きづらさを感じている子どもたちがいます。

 今回は、そういった子どもたちの成長・発達の過程において気を付けたいことについてお伝えします。

【はじめに】時期に応じて変わる子どもの精神・行動面の問題

 「子ども」の精神面、行動面の問題や異常は、幼児期、児童期から思春期までの年代に応じて異なります。それは、その時期が成長・発達していく過程だからです。そのことを意識しながら、子どもを観察し、問題点への対応を検討することが大事です。


【成長・発達の過程について】幼児期から児童期、思春期へ 関心は内向きから外、再び内に
(図)ライフサイクルにおける内向−外向

【参考文献(図の引用)】
子ども相談・資源活用のワザ、衣斐哲臣、金剛出版、2008年

 人間の心理的活動が自分の内側に向かうか外側に向かうかという視点で見た場合、ライフサイクル上では、(図)のようなイメージを描くことができます。

 自我の芽生えである幼児期に自分への内向きの関心が強くなり、児童期になると仲間集団との遊びや勉強に対して、外向きの関心が高まります。やがて思春期を迎え身体の変化とともに自立に向けた自分探しの時期が始まります。

 近年その時期の遅れもいわれてはいますが、思春期は最も内向していく時期と位置づけられています。

 その後、青年期中期・後期を経て成人期へと、社会参加を中心とした外向きの活動が続きます。そして老年期には内向きへと移行していくとされています。


【子どもの問題の現れ方】日常生活が心理的活動に影響 精神、行動の問題として現れる

 発達の過程における子どもの問題の一つとして、コミュニケーション、日常的な行為、学習などにおいてうまくできにくい、あるいはもともと苦手であるという場合があります。

 そのために、日常生活などでうまくいかないことが、外側、内側双方への心理的活動に影響を及ぼし、精神面、行動面の問題として現れることがあります。


外から見える問題の大きさに比例しない本人が感じるつらさ

 幼児期の子どもの中に、言語や身辺自立の遅れ、対人関係やコミュニケーションのとりにくさなどが日常生活で見られ、外側に向かう時期である幼稚園・保育園などでの集団行動にやりにくさが見られることがあります。そのため家族や園の先生が戸惑うことがあります。

 この場合、大人の視点から、子どものやりにくさの軽減や緩和に向けた解決策を講じることが一般的だと思います。ただ、いったん問題が消えても日常生活で苦労している時期があったという視点を忘れたまま学童期に入ると、学年が上がるにつれ、表面上目立たなくても、子ども自身が持つ問題意識やつらさがむしろ深刻になってくることがあります。

 これは、本人がコミュニケーションや学習など日常生活で苦労を感じるようになる一方で、周囲の大人が知らず知らずのうちに通常と同じペースでの発達を基準として、そこに合わせることを求め続けるときに見うけられることがあります。

 本人が感じるつらさは、外から見られる問題の大きさと必ずしも比例しないことがあります。一見ほとんど問題ないように見えても、本人の内側ではむしろ違和感が強く、場合によっては集団活動への参加の意欲が低下してしまうこともあります。

 思春期以降になると、このつらさから精神面の問題がより強く見られるようになります。


【求められる子どもへの対応】能力を発揮しやすい環境に調整 本人なりのペースを援助

 このような現象は、児童期になるまで日常生活で苦労している時期があったことに気付かれずにいたケースでも、本人がコミュニケーションや学習、日常的なことでの苦手さを感じていることがあれば、同様に見られることがあります。

 そのため、精神面・行動面の問題が見られるときには、環境や周囲の要因だけでなく、本人の普段の生活やコミュニケーション、学習などでうまくやれているところと苦労しているところをよく観察し、そちらに目を向けて対応を検討することも大事です。

 ですから子どもの場合は、休養をとって回復するという方向性もありますが、それだけでなく、本人が能力を発揮しやすい環境を調整していく方向性を持つことも大事です。

 その中で、再び本人なりの発達のペース・過程に進んでいくことを援助していきます。


【終わりに】普段の様子をよく見ることが大事

 今回述べた発達過程は、心理的活動が内側・外側に向かいながら、社会および他者との関係の中で個人が社会化(社会の一員として他の人々との相互影響を通じて知識・技能・価値観などを習得していく過程)および個性化(社会化する過程において個性を発揮し独自のあり方を実現)していく過程になります。

 ただ、実際の成長過程は常に順調、健全とは限りません。発達・成長の過程では、それぞれの個人のペースで進んでよいとは思いますが、そのときに助けになることは、本人の様子を普段からよく見て自分の子どもの能力を知っておくことです。家族の協力は重要だと思います。


執筆いただいたのは
熊本大学医学部附属病院
神経精神科
城野 匡(ただし) 講師
 
・精神保健指定医
・日本精神神経学会指導医
・日本老年精神医学会専門医
・日本児童青年精神医学会認定医
・ 子どものこころ専門医