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「あれんじ」 2017年11月4日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第65回】いのちの「唄」に寄り添って

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第65回】

【第65回】いのちの「唄」に寄り添って
社会医療法人芳和会
看護部長
川上和美

 私はこれまで、たくさんの仲間や患者さんとのかかわりのなかで、多くの大切なことを学び、看護師として育てていただきました。

 病院の夏祭りが大好きだったAさん。師長になったばかりの私に「顔が硬いよ」と注意してくれ、3カ月たった頃「婦長(師長)さんらしくなったね」と笑ってくれました。

 90歳のBさんとは、入院中に姿を見せなくなった息子さんを心配し、鍵のかかった自宅の玄関先に座り込んで息子さんの帰りを一緒に待ちました。息子さんの幼少期の話をするBさんの優しい笑顔に、息子を思う母親の温もりと強さを感じました。

 どんなに困難な状況になっても「家に帰りたい」と願ったCさん。自宅を訪問すると寝床には家族の写真。壁には20歳の軍服姿のCさんの写真、部屋にはCさんの人生が詰まっていました。

 人には誰も、それぞれに人生の物語があり、人間のささやかな命の営みが、その人その人の「唄」となって聴こえてきます。

その唄はさまざまな言葉で表現され、声なき言葉も、息遣いも、ひとつひとつがその人の生きてきた命の言葉となりつながっていく。

 私たち看護師は、多くの患者さんと出会い、触れあっていく中で、その患者さんの「唄」に耳を傾け、思いをはせ、寄り添うことができる…。看護師という仕事は本当に天職だと思えます。

 多くの困難があっても、患者さんの生き抜く生命に寄り添い働きかける仲間がいること、学び続けられる環境があること、看護師として仕事を続けていられることに、心から感謝しています。