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「あれんじ」 2017年2月4日号

【【慈愛の心 医心伝心】】
【第59回】 「人」がつなぐ医療

女性医療従事者によるリレーエッセイ 【第59回】

【第59回】 「人」がつなぐ医療
はっとり心療クリニック 
臨床心理士
植村孝子

 自分の感性が生かせる仕事に就き、輝いていた彼女が急に入院することに。脇のしこりに気づき、精査した結果、県外の病院で手術を受けることになったのだ。手術は成功し、彼女は職場復帰した。   

 快気祝いの席で、私は聞いてみた。専門病院で最先端の医療を受け、何が一番印象に残ったのか。最新の技術?施設? 無駄のない入院計画?…思い巡らしていると、意外な答えが返ってきた。

 「手術の後、看護師さんが私のために、食堂まで冷水を取りに行ってくれたんです!」 手術後、喉がヒリヒリするほど渇いていた。しかし、水は飲めない。彼女の渇きの訴えに、若い看護師は「うがいなら大丈夫」と言って手術室を出た。水道はそこにあるのに…と思っていると、「冷たい水の方が渇きも鎮まるかなって思って」と、紙コップを渡された。

 「感激を通り越して感動しました。あの時のことは忘れません」

 私の予測は見事に外れた。そして「生身の人間」が生み出す力に改めて感じ入った。
 メンタルヘルスの観点から見ると、医療従事者の労働環境は想像以上に厳しい。長時間労働に加え、夜勤・交代制勤務は疲労が回復しにくい。それでも「人の生死に関わる大事な仕事」「みんな頑張っているのに弱音は吐けない」と踏ん張る。さらに効率化が求められる環境で、心の余裕を持って働けるだろうか。

 先の看護師の行為は診療報酬にならないし、効率的でもない。しかし、患者に一生忘れられない感動をもたらした。

 医療の質と豊かさは「人」によっても届けられることを心したい。