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「あれんじ」 2016年12月3日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第58回】ある日突然に

女性医療従事者によるリレーエッセイ 【第58回】

【第58回】ある日突然に
くまもと江津湖療育医療センター
医師 鶴田元子

 夫が脳梗塞に倒れたのは、ちょうど1年前の土曜日の夕方でした。外出先にかかってきた夫からの電話の尋常でない様子に、狼狽(ろうばい)して救急車を呼び、渋滞した道を夢の中のように運転して帰宅し病院へ搬送したのが、まだ生々しく思い出されます。

 自分が医者なのになぜ伴侶の健康状態にもっと注意できなかったのか自分を責めました。夫は肥満傾向で高脂血症があり、甘いものや洋食、揚げ物などが好き。私も忙しさを理由に、つい簡単なお総菜や外食に頼ることが多かったのです。

 生活習慣病には肥満や高脂血症、高血圧、糖尿病などがあります。そのような方は、動脈硬化といって血管の内側にプラークという脂肪の層がたまっていることも多いのです。

 それが心臓や脳の血管に起こると、その細くなっている血管がある日詰まって、病気が発症します。病院で首の太い血管の断面を画像検査すると、どれくらいプラークがたまっているのかが分かります。

 なぜ病気になる前に気を付けて、食習慣を見直したり検査を受けなかったのかと悔やんでも悔やみきれません。幸い夫は一命を取り留め、少しまひは残りましたが、リハビリを頑張っています。

 日本人の食事は昔と比べて西洋化して、脂肪分や糖分が多くなっています。現代の日本人に生活習慣病とそれに伴う心筋梗塞、脳卒中などが増えているのは食習慣の変化が大きな要因です。病気は予防が大切です。病気になってからでは遅いのです。