すぱいすのページ

トップページすぱいすのページ「あれんじ」 2016年8月6日号 > 痛い「巻き爪」「陥入爪(かんにゅうそう)」 予防・治療で快適に

「あれんじ」 2016年8月6日号

【元気!の処方箋】
痛い「巻き爪」「陥入爪(かんにゅうそう)」 予防・治療で快適に

 足の親指の爪が皮膚に食い込んで痛いという経験はありませんか。それは「巻き爪」、あるいは「陥入爪」かもしれません。そのまま放置し、悪化させるケースも多いようです。

 そこで今回は、「巻き爪」と「陥入爪」の症状や主な原因、重症度別の対処法・治療法などについて、専門医に聞きました。

【はじめに】「巻き爪」は状態、「陥入爪」は疾患

 「巻き爪」とは、爪の端が内側に巻いた状態を指します。皮膚に食い込んで痛い場合は、治療や矯正によって改善を図れます。

 一方、「陥入爪」は炎症を起こした状態で、疾患名です。


【巻き爪/原因】疾患によるものと、そうでないものが

 爪が内側に巻いてしまう原因には…

【靴による圧迫】
・先端の狭い窮屈な靴
・ハイヒール
【加齢による影響】
【生活習慣の問題】
・運動、歩行不足
【爪の形状・切り方】
・巻きやすい爪の形
・深爪
【疾患によるもの】
・外反母趾(がいはんぼし=足の親指の付け根の骨が変形し、外側に突き出た状態)  
などの足の変形
・爪白癬(つめはくせん=爪水虫)  

などが考えられます。

 私たちが歩くとき、足の親指には底面から大きな力がかかります。その際、爪甲と呼ばれる部分(図)が上方から親指を支え、スムーズな歩行運動ができるように補助しています。
ですので、まっすぐ親指に体重がかかり、きちんと歩くことができないと、巻き爪になりやすくなるのです。

 窮屈な靴やハイヒールは、横から大きな力が加わることで、爪が巻いてしまいます。若い女
性が巻き爪になる原因の多くが、これです。

 深爪すると、体重がかかる親指に対して爪が支えきれず、食い込んでしまいます。

 足や腰の関節が曲がっていたり、加齢で下半身が弱ったりすると、床が体重を支える力を指にまっすぐ加えることができないため、巻き爪の原因となるのです。


【巻き爪/治療】原因となる疾患があれば、その治療を

 爪白癬などに伴って発症した巻き爪は、元々の疾患の治療が必要です。

【爪白癬(爪水虫)】 
 爪水虫になると、爪が黄白色に濁ります。進行すると厚くもろい爪になり、巻き爪になることがあります。
 診断には、爪の一部を削って顕微鏡検査をします。検査に痛みはなく、10分程度で結果が出ます。
 白癬菌が認められたら、抗真菌剤の外用や内服で治療します。治療効果が現れると、爪の厚さが正常に戻ってきて、改善していきます。

【巻き爪の矯正】
 爪甲の湾曲を矯正することが治療となります。
 弾性ワイヤー法は、爪甲に弾性ワイヤーを装着して湾曲の改善を図ります。
 爪甲の先端から数ミリの部分に注射針で2カ所穴を開けます。ワイヤーをその穴に通し、接着剤で固定。爪が伸びるまで1カ月から数カ月装着したままにし、爪が伸びたところでワイヤーを外して経過を観察します。
 同様にワイヤーを爪甲の辺縁に引っ掛けて矯正するVHO法という矯正法があります。
 これらは巻き爪による痛みには効果的ですが、〈対症療法であるためワイヤーを外すと巻き爪が再発することも多い〉〈巻き爪の矯正術は保険適応がなく、自由診療〉だということを、知っておいてほしいと思います。
 矯正術を行っているかどうかは、医療機関を受診する前に確認することをお勧めします。


【巻き爪/予防・改善】正しい爪切りの習慣と、適切な履き物の着用など
【正しい爪切り】
 足の指、特に親指の爪は、先端皮膚が見えないくらいの長さにします。
角を切らないように四角い爪にし、やすりで整えましょう。

 爪甲は、湾曲していても機能には問題がないことも多いです。巻き爪があっても痛みがなく、歩行時にしっかりと親指を支えることができていれば、必ずしも矯正の必要はありません。

 正しい爪切りの習慣と、適切な履き物の着用、歩行、運動などの生活習慣の改善が重要です。


【陥入爪/症状と原因】巻き爪、足に大きな力がかかる運動などがリスクに

 陥入爪とは、爪が食い込んで爪の横の皮膚を傷つけ、赤くなったり腫れたりして痛みがある状態のことです。赤く盛り上がって、出血しやすい肉芽を形成することもあります。

 深爪によって、歩くときに爪が食い込むために発症します。巻き爪があると、陥入爪になりやすいです。

 巻き爪がなくても、爪甲の幅が広い場合や外反母趾、剣道、卓球、陸上競技など足に大きな力がかかるスポーツの選手も発症しやすいです。

 また、がんの治療に使用される薬剤に陥入爪を発症しやすいものがあることが知られています(肺がん、乳がん、大腸がんなどに使用されるEGF受容体型キナーゼ阻害薬や抗EGFR抗体薬)。


【陥入爪/治 療】爪が食い込まないように、状態によっては内服や手術も

 陥入爪の治療は、

@食い込まないよう爪を伸ばす(アクリル人工爪など)
A爪と皮膚の間に空間を作る(綿球挿入、テーピング、Gutter法:爪の辺縁にチューブを挿入して食い込まないようにする)
B爪甲の端を切除する手術

などがあります。

 肉芽を形成したり、二次感染を伴っている場合には、軟膏や冷凍、焼灼などの肉芽の治療、抗生剤内服などを併用します。


【終わりに】

 正しい爪の切り方が、巻き爪や陥入爪の予防になります。爪の切り方は、親から子どもに受け継がれることが多いので、正しい爪の切り方を知って、習慣づけることはとても大事です。

 また、爪だけでなく、正しい姿勢や生活習慣、歩き方などで、足や足の指の変形を防ぎましょう。


話を聞いたのは
医療法人 創起会
くまもと森都総合病院
松尾 敦子 医師 
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医