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「あれんじ」 2016年6月4日号

【元気!の処方箋】
暑さのせいだけじゃない!熱中症の「なぜ?」「どうする?」に答える

 梅雨どきから注意が必要な熱中症。今年は避難生活や震災後の工事、休校時の代替授業での夏休みの短縮など環境が変わる中、大人も子どももいつも以上に気を付けたいものです。
 そこで今回は、昨年7月4日号に掲載した「熱中症」について、再度紹介します。(取材・文/坂本ミオ)

【❶原因】体温調節がうまくできなくなる3つの要因
【図1】熱中症を引き起こす要因

 私たちの体は、外気温の上昇や運動などによって体温が上昇すると、皮膚温度が上昇し、体温の熱を外気に逃がします。また、汗をかき、それが蒸発することで熱を逃がし、体温の調節を図っています。
 この機能がうまく働かず体温が調整できなくなり、体の深部の熱が下がらなくなってしまうことから、めまいやけいれん、筋肉の硬直や頭痛、嘔吐、意識障害などさまざまな症状を起こすのが熱中症です。
 では、なぜうまく体温を下げられないのか…。それは、気温や湿度、エアコンを適宜使用しているかといった【環境】の要因と、持病やその時の体調など【体の状態】、屋外での長時間の運動・労働や水分補給ができなかったというような【行動】の、3つの要因によって引き起こされます(図1)。


【❷対処】症状を見て、適切な判断を
【図2】熱中症の重症度と症状、治療法
(日本救急医学会「熱中症に関する委員会」による重症度と症状、治療法 改編)

 熱中症にはさまざまな症状が見られます。というのは、熱中症は暑さの中で起こる障害の総称だからです。
 「熱失神」「熱けいれん」「熱疲労」「熱射病」などに分けられますが、皆さんに知っておいてほしいのは、症状による重症度の目安と対処法です。
 左の図2は、重症度をT度(軽症)、U度(中等症)、V度(重症)に分類し、それぞれの症状、治療法を示したものです。
 対処の基本は、体温を下げることなので、可能であれば

@涼しい場所に移動
A水分・塩分を補給
B体を冷やす

ことです。
 それらによって症状が改善するT度の場合は、応急処置とその後の見守りでいいでしょうが、U度の症状が現れたり、T度の症状に改善が見られない場合は、病院を受診してください。場合によっては、入院して治療を受ける必要があります。
 V度の症状があれば、救急車を呼びましょう。命にかかわる場合もあります。入院しての治療が必要です。


【❸予防】乳幼児や高齢者、持病のある人、運動部員など特に注意
体を冷やすポイント
 できるだけ迅速に体温を下げることが大事です。
◎屋外であれば、木陰などに寝かせ、水をかけたり、ぬれタオルであおいだりしましょう。

 熱中症が疑われる人がいた場合は図2を参考に対処しますが、最も大事なのは、一人一人が熱中症にならないよう心がけることです。
 熱中症の中でも最も重症な熱射病になると、血圧が低下し、肝臓や腎臓など内臓が障害を受け、大変危険です。
 特に体温調節がうまくできない乳幼児や、体の機能の低下から重症になりやすい高齢者、内臓疾患の持病がある人は、より注意が必要です。持病がなくても、二日酔いや寝不足などで体調不良のときは、いつも以上に気をつけましょう。
 また、児童、生徒のスポーツでは、指導者も環境や選手の体調を把握し、予防に努めてほしいと思います。夏場の大会では、選手だけでなく応援する人たちも注意してください。
 予防の基本として、次のことを心がけましょう。

◎暑い時間帯の外出をなるべく避ける
◎外出の際は、帽子や日傘などで日陰を作る
◎熱や汗がこもらない素材・形の服を着る
◎体を冷やすグッズなど も適宜利用
◎水分補給は、のどが乾く前に!


◎氷やアイスパックがあれば、頸部、脇の下、足の付け根など、大きい血管が通っている場所を冷やしましょう。


【終わりに】

 熱中症の予防を目的に1954年にアメリカで提案された指標があります。「暑さ指数(WBGT=湿球黒球温度)」と呼ばれるものです。日本でも熱中症の危険度を判断する数値として環境省が情報を提供しています(環境省熱中症予防情報サイト)。
 人体と外気の熱のやりとりに着目した指標で、人間の熱バランスに影響が大きい気温、湿度、輻射熱(地面や建物、体から出る熱)の3つを取り入れています(図3)。
 湿度が7割も占めるのは、汗が蒸発しにくくなるため。空気中に熱を逃がすことができにくくなってしまうことが、熱中症の大きな要因だからです。
 熊本は、温度も湿度も高い地域です。日頃健康な人も油断せずに予防してほしいと思います。


話を聞いたのは
熊本大学医学部附属病院
救急・総合診療部 

笠岡 俊志 教授
・日本救急医学会(指導医、専門医、評議員)
・日本臨床救急医学会(評議員)
・日本集中治療医学会(集中治療専門医)
・日本内科学会(総合内科専門医)
・日本循環器学会(循環器専門医)
・熊本県災害医療コーディネーター