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「あれんじ」 2016年5月7日号

【元気の処方箋】
きちんと知って、対処したい 自律神経失調症

なんとなく不調な場合に簡単に使いがちな「自律神経失調症」。しかし、具体的にどういう状態を指すのか、原因などを含めて曖昧な印象です。

 そこで今回は、「自律神経失調症」とは何なのか、症状やそれを引き起こす要因、診断、治療についてお伝えします。

【はじめに】独立した病名ではなく、さまざまな症状が起きた状態

 自律神経は心血管、呼吸器、消化器、内分泌腺などの内臓器をはじめ体全体に分布し、呼吸、循環、物質代謝など生命維持にとって重要な働きを調整しています。

 これには交感神経と副交感神経という正反対に働く2つの神経があります(表1)。失調はバランスが崩れるという意味ですが、自律神経失調症はこの2つの神経のバランスが崩れたり、過剰に緊張することによって、心身に多彩な症状が起きた状態です。しかも臨床検査でもそれを説明する病変がなく、うつ病や神経症などの精神疾患によらないものとされています。

 わが国では、広く知られた診断名ですが、概念もやや曖昧です。患者さんが訴える症状の原因が見つからない時の診断名として安易に使われてきたこともあり、医学的には独立した病名ではなく、状態と考えられています。


自律神経には交感神経と副交感神経があり、お互いが正反対の働きをし、バランスよく機能しています。交感神経は運動、興奮、緊張、ストレスで高まり、副交感神経はリラックスした時や睡眠中によく働きます。


(1)症状 身体症状と精神症状 出現の仕方もさまざま

 小児から高齢者まであらゆる年齢に起こりますが、症状はさまざまで、出現の仕方も人によって異なります。多くは、身体症状と精神症状が見られます。

 表2のように身体症状では、だるさ、食欲不振、冷え症、微熱など全身にわたるものから、頭痛、肩こり、立ちくらみ、めまい、耳鳴り、しびれ、頻尿、残尿、不眠症などの神経系、口渇、げっぷ、腹部のもたれや不快感、吐き気・嘔吐、下痢、便秘などの消化器系、動悸、胸苦しさ、胸痛などの心血管系をはじめ、呼吸器系、内分泌系などの自律神経と関連する症状が見られます。

 また、イライラ、不安感、孤立感、落ち込み、やる気が出ない、憂うつになる、感情の起伏が激しい、焦り、集中できないなどの精神的な症状も伴います。
 このような多彩な症状を自覚し、症状と関連の深いと思われる専門の診療科を受診して、血液検査をはじめ心電図、内視鏡検査やCT・MRIなどの専門的な検査を受けても、明らかな病変が見つからないか、たまたま異常が見つかっても、それでは症状を説明できないのが特徴です。

 自律神経失調症でも、症状がある特定の臓器に強く出る場合は更年期障害、下痢や便秘、腹痛を来す過敏性腸症候群、体位性頻脈症候群などの診断名で呼ばれることがあります。

 体位性頻脈症候群は、以前は起立性調節障害と言われていた疾患です。若年の女性、特に中学生・高校生に起こりやすく、体のだるさ、立ちくらみ、めまい・頭痛、朝起きができず朝寝坊をするなどの症状がみられ、起立によって心拍数が著しく増加する病気です。午前中は何となく調子が悪く、不登校の原因になることもあります。


(2)原因 ストレス、環境、性格などさまざまな要因が関与

 自律神経失調症は自律神経のバランスの乱れや過剰な緊張などさまざまな要因が複雑に絡んで起こります。

 自律神経の働きを障害する薬や酒の飲み過ぎ、更年期障害、体質の他に性格、職場や家庭などの社会環境や人間関係などによるストレスなどが関与しているといわれています(図)。

 ヒトを含め動物は生きていく上で、自然環境や社会環境の中で多くのストレスを受けますが、それにうまく対応し、体を適応させるのが自律神経系と内分泌系(ホルモン)の働きです。ストレスは交感神経

の働きを亢進させることが知られています。心や体へのストレスは自律神経のバランスを崩し、過剰に緊張させるのです。


(3)診断 検査や心理テストなどで似た症状の病気の除外も

 自覚症状があり、検査を行っても、原因となる異常を認めず、これに自律神経のバランスの乱れや過度の緊張があれば自律神経失調症といえます。

 自律神経機能を調べるには、血圧の変化、心拍数の変動、血流、発汗、点眼薬を用いた瞳孔変動などを見る検査を行いますが、必ずしも異常が出るとは限りません。その場合は心理テストや性格テストで調べます。

 自律神経失調症と似た症状を呈する病気として、起立性低血圧、排尿や発汗障害などを伴う自律神経不全症という病気があります。これは自律神経失調症と異なり、自律神経の働きが低下することによって起こります。また、同様の精神症状は心身症、仮面うつ病、身体表現性障害(ヒステリー、心気症など)などの病気でも見られます。

 これらの病気の可能性を除外するためには、神経内科や心療内科への受診が必要です。


(4)治療 生活指導と薬物療法が主環境を見直すことも大切

 まず、気になる症状について検査を行い、重大な疾患ではないことを確認してもらい、不安を取り除くことが重要です。

 治療法には、主に生活指導と薬物療法があります(図)。

 生活指導の重点は、規則正しい生活の実践、ストレス解消、食生活改善です。自律神経の緊張やバランスの乱れを予防し改善するためには、十分な睡眠、適切な食事を取るなど規則正しい生活を行い、不安・緊張を来す生活環境を見直すことが大切です。

 薬物療法では症状に応じた治療薬を服用します。不安が強い時や精神が不安定な時は、心療内科医に相談してください。抗不安薬、抗うつ薬を用いた薬物療法や、心理療法、カウンセリング、行動療法などが試みられることがあります。また、必要に応じて、漢方薬や鍼灸・マッサージ療法などが用いられることもあります。


執筆いただいたのは 
九州看護福祉大学 熊本 俊秀 特任教授
医学博士
大分大学名誉教授
日本神経学会専門医・指導医
日本内科学会認定医