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「あれんじ」 2016年4月2日号

【元気!の処方箋】
子どもの睡眠障害 体内時計を狂わせない 生活習慣で、予防・改善を

 4月。新年度が始まり、入学、進級する子どもたちは新しい環境での生活が始まります。元気で楽しい暮らしの基本は、規則正しい生活習慣から。そう分かっていても、誘惑の多い現代社会では親の思うようにはいかないことも…。

 今回は、子どもに増えているという睡眠障害についてお伝えします。

【はじめに】不登校の原因の一つにもなる睡眠障害
【図1】平成26年度睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立など関係性調査 文科省

 本紙の昨年11月7日号で、睡眠障害について伝えました。ひと口に睡眠障害と言っても、〈不眠症〉〈睡眠呼吸障害〉〈睡眠中の異常行動や運動障害〉〈概日リズム睡眠覚醒障害〉〈過眠症〉と、原因や症状、それを引き起こす疾患などさまざまです。

 その中で、生活時間の変化による体内時計のずれが原因となって、概日リズム睡眠覚醒障害(以下、リズム障害)を起こす子どもや若者が多いことを知りました。

 「子どものリズム障害は、ほとんどのケースで生活習慣と関係が深い。睡眠をないがしろにしていると、すべての人がリズム障害になるわけではないが、なりやすい人たちがいる。そうなると朝起きられなくなり、最終的に学校に行けなくなる場合もある」と福原明・くわみず病院睡眠医療センター長。

 不登校の原因の一つになり、本来健やかに元気に育つ時期にそれを阻害する子どもの睡眠障害について、福原センター長に聞きました。


【(1)睡眠障害がもたらすもの】成績や作業効率の低下 イライラ、肥満など
【図2】睡眠の役割

 スマートフォン(スマホ)やパソコン、ゲームなどのIT機器、部活動や塾通いなど、現代の子どもたちの周囲は刺激にあふれ、忙しい毎日を送っています。
 そのため、つい睡眠を削りがちです(図1)。しかし、睡眠には図2のような大きな役割があります。

 良質な睡眠を適正な時間確保できないと、〈成績が落ちる〉〈作業効率が落ちる〉〈イライラする〉〈落ち着きがなくなる〉〈太る〉〈身長の伸びが悪い〉などの影響があることが、各種の研究から分かってきました。

 また、起きやすいリズム障害は、睡眠時間帯が後ろにずれてしまい遅い時間にしか眠れず、朝はなかなか起きることができない睡眠覚醒相後退症候群。図3で分かるように、中学1年時に発症することが多いのは、部活や塾通いを始めたり、交友関係が広がったり、生活が大きく変わるからだと考えられます。


【図3】発症時の学年
睡眠覚醒相後退症候群と診断された患者の概要 (くわみず病院調べ)


【(2)睡眠障害の誘因】眠気を抑制、体内時計を狂わせるIT機器や遅い夕食
【図4】睡眠障害の誘因(複数回答)
睡眠覚醒相後退症候群と診断された患者の概要 (くわみず病院調べ)

 特にゴールデンウイークや夏休み明けに症状が出やすいのは、夜更かしが恒常化して朝起きなくなるためです。朝遅くまで寝ないと睡眠が確保できないリズムに体が慣れ、体内時計がずれて固定してしまうと、起きられなくなります。

 睡眠障害の大きな誘因に、IT機器があります(図4)。使用時間の長さはもちろん、部活や塾を終えた後に使用すれば、就寝時刻がさらに遅くなります。加えて、IT機器の青い光には眠気を誘う物質(メラトニン)を抑制する働きがあります。

 また、塾や勉強、部活などによって帰宅が遅くなり、夕食時間が後ろに大きくずれることも大きな問題です。食事の間隔の乱れは体内時計を狂わせるからです。

 本来は、1日の中で最も長い絶食期間を夕食と朝食の間に取ることで体内時計がリセットされます。それが、夕食の時間が遅くなり、昼食と夕食、夕食と朝食の間の絶食時間がほぼ同じになると、体内時計が混乱してしまうのです。


【(3)治療・改善には】環境整備+ルーティン 体内時計を正すのは自分!

 人が眠るためには

◎日中の運動とそれによる疲労
◎日中の光と夜の暗闇
◎定期的な(夜間の絶食時間を確保した)食事
が必要です。

 治療では、まず睡眠不足の解消を図り、学校に行くなど日中の活動を促します。また、IT機器の使用の制限や、寝ながら本を読んだりテレビを見たりしないなど、「起きるべき時間に起きられる」睡眠の環境整備から始めます。

 リズム障害の場合、起きるときに倦怠感や不快感、頭痛や腹痛などの症状が高い頻度で見られます。そのため、「きつい」→「もう一度寝よう」というサイクルに陥りがちです。しかし、ここをクリアしないと先には進みません。

 そこで、【起きるときのルーティン】を作ることを勧めています。例えば、きついけど…

背伸びする

体を少し起こす

カーテンを開ける

窓の外を眺める

といったことを決め、必ずする。ここで葛藤に負けると悪循環が続きますが、頑張れば良い方向に動きます。

 最終的には自分自身の意志がとても大事。体内時計を正せるのは自分だけです。積極的に治療に加わるかどうかで改善に大きな違いが生まれます。周りは、本人のやる気を促すサポートを心掛けましょう。


【memo】睡眠が足りているかどうかの目安は?

○午前中に眠気を感じる
○休日の起床時間が、平日より2時間 以上遅くなる
上記の場合は、睡眠不足です。平日の暮らし方を見直しましょう。


【終わりに】

 睡眠障害を訴える中には、睡眠だけではない問題があることもあり、治療は単純ではない場合もあります。それだけに、治療には医師や親との信頼関係を築くことも重要です。

 「自分の行動を、どれだけ時間を意識してできるか」を大事にしながら、改善を目指しましょう。


話を聞いたのは

社会医療法人 芳和会 くわみず病院

福原 明 内科診療部長
睡眠医療センター長

・日本睡眠学会認定医
・日本プライマリ・ケア連合学会認定指導医