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「あれんじ」 2010年8月7日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第五回】焼き肉味のあめ

女性医療従事者によるリレーエッセー 慈愛の心 医心伝心 【第五回】

【第五回】焼き肉味のあめ
熊本大学医学部附属病院
消化器内科
医師 牧 曜子 

 「幸せだと感じられるのは、普通に食事ができて、そのおかげで健康でいられるから」という当然なことを大切にしていきたいと思い、消化器内科を専門に選んでから、はや8年が過ぎました。
 数多い消化器疾患の中に『炎症性腸疾患』という若年者に多くみられる病気があります。治療のために、絶食や食事制限など、若い患者さんにとってつらい入院が必要になることもあります。私と同世代の患者さんが、社会人としての生活を制限され、入院生活に対する焦りや絶食のつらさに耐えられている姿を見ると、治療の一環とは知りつつも「早く何か食べさせてあげたい!」と思います。
 ある時、「あめなら1日に何個か食べてもいいですよ」と伝えると、その患者さんは「焼き肉味のあめがあったら元気が出るのになあ!」と笑っていました。苦しい治療の中でも明るい患者さんに励まされ、1日も早く「焼き肉食べていいですよ」と送り出すことが、私の仕事だと思いました。
 仕事が忙しく、気持ちが落ち込む時、すかさず「元気があれば大丈夫! 元気とやる気と根気だ!」とアントニオ猪木さん風に励ましてくださる信頼する先生がいます。その先生の仕事への情熱を分けていただくと「よし! 元気出して今日も頑張ろう」と思います。
 ご年配の患者さんからは、人生の先輩としてのアドバイスもたくさん頂きます。最近では、「先生、人生は損するが得よ!」という言葉が身に染みました。元気を出して、これからも邁進していきたいです。