すぱいすのページ

トップページすぱいすのページ「あれんじ」 2015年11月7日号 > さまざまな睡眠障害 「ぐっすり眠れた〜」の朝を迎えるために

「あれんじ」 2015年11月7日号

【元気の処方箋】
さまざまな睡眠障害 「ぐっすり眠れた〜」の朝を迎えるために

 健康な生活に欠かせない睡眠。 最近、「睡眠障害」という言葉を聞くようになりましたが、具体的な症状や原因など漠然とした印象です。

 そこで今回は、「睡眠障害」の概要と、改善に向けてのポイントを専門医に聞きました。(取材・文/坂本ミオ)

【睡眠に問題を感じていますか?】あなたに必要な睡眠時間は
【図1】年代別の必要睡眠時間の目安
出典:Hirshkowitz M. et al. Sleep Health. 2015:40-43

 「布団に入ってもなかなか寝付けない」「いったん寝入っても夜中に目が覚め、その後なかなか眠れなくなる」「起きるつもりの時間より随分早く目覚めてしまい、眠れない」…など、睡眠に関して悩みを持つ人は少なくありません。

 しかし、最適な睡眠は人それぞれです。健康的に過ごすために必要とされる睡眠時間の目安は、小学生に必要な睡眠時間はおよそ10時間、中学・高校生は約8・5時間ですが、60歳以上であれば6時間程度でも十分だと言われています(図1)。

 就床時間に対する睡眠時間の割合を「睡眠効率」と言います(図2)。例えば6時間眠ればいい方が、夜の8時に床につき10時まで眠れず、朝5時に起きたとします。この方は必要な睡眠時間が取れているにもかかわらず、「眠れなかった」という不満感を持ってしまいがちです。それは、睡眠効率が低いから。この場合は布団に入るのを遅くし、早く寝付けるようにすることで、睡眠の質・量が確保されるようになるでしょう。


【図2】


【「睡眠障害」ってなに?】不眠や過眠、呼吸障害、行動障害、リズムの崩れ…
【図3】さまざまな睡眠障害

 では、「睡眠障害」とは何でしょうか。文字通り、睡眠中に起きるさまざまな障害の総称ですが、大きく分けると、

@睡眠そのものが取りにくい不眠症
A睡眠時の呼吸に起因する睡眠呼吸障害
B睡眠中の異常行動や運動障害
C睡眠そのものではなく、リズムがずれることから起きる概日リズム睡眠障害
D睡眠が取れているにもかかわらず、日中に強い眠気が生じ、起きているのが困難になる過眠症

などに分けられます(図3)。


【睡眠障害の診断】原因疾患や睡眠パターンを確認

 図3のように、それぞれのタイプによって原因が異なるため、その診断が大事です。
 十分な問診と睡眠の検査を行い、睡眠時無呼吸症候群など原因疾患があると疑われる場合は、専門の病院で治療します。

 原因疾患が特に見当たらない不眠の場合は、どういう睡眠パターンなのかを明確に把握するために「睡眠日誌」をつけてもらいます。

 不眠の中には、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒といった症状があります。

 何らかのストレスで一過性に緊張が高まり、眠れない経験をすることは誰にもあることです。その原因となった緊張や心配が解消したにもかかわらず、同じような症状が続き、さらに日中に疲れたり、集中力が低下する、イライラするなどの日中の症状が週3回以上ある場合に不眠症と診断します。

 また、不眠を起こすきっかけとなった原因は消失しているのに、「また眠れなかったら、どうしよう」という不眠への不安が原因となって、不眠症になってしまうという悪循環が起こることもあります。


【治療・改善のポイント】「眠らなければ」と過剰に思わないように

 布団に入って15分ほどたっても眠れない、途中で目覚めて眠れないときは、布団から出て本を読んだり、穏やかな音楽を聴いたりして、「眠ろう」「眠らなければ」という意識を持たないことが大事です。

 また、30分以上の昼寝や夕方の仮眠をしないようにしましょう。特に高齢者の長すぎる仮眠は、心筋梗塞や認知症などの疾患発症のリスクになることも分かってきました。

 一方、15分程度の昼寝をすると、その後の集中力が上がることが、学校教育現場での調査でも明らかになっています。

 その他、【メモ】のような点に気をつけて、快適な睡眠が取れるよう暮らしましょう。


【取材を終えて】

 今回は十分に伝えられなかった「過眠症」や、現代の若者の生活時間の変化による体内時計のずれが起こす睡眠障害の問題など、第2弾を来年、お届けしたいと思っています。


【メモ】睡眠障害 治療・改善のポイント

◎日中、適度な運動を
運動をすると体温が上がります。1日の体温差が大きいと眠りやすくなります。

◎夕食と朝食を12時間空ける
12時間の絶食時間があることで、朝の体内時計が整うことが分かっています。

◎光を意識して
起きたらカーテンを開け、目から光を取り入れ、寝るときには暗くしましょう。

◎平日と休日の起床時間のずれは 2時間以内に
休日に平日の起床時間より2時間以上遅く起きるようなら、平日の睡眠が足りていないのかも。平日の暮らし方を見直して。

◎飲酒や入浴は就寝2、3時間前までに


話を聞いたのは

社会医療法人 芳和会
くわみず病院

福原 明 内科診療部長 睡眠医療センター長

・日本睡眠学会認定医
・日本プライマリ・ケア連合学会 認定指導医