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「あれんじ」 2015年3月7日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第44回】子どもの「考える力」を育てるもの

女性医療従事者によるリレーエッセイ【第44回】

【第44回】子どもの「考える力」を育てるもの
熊本大学医学部附属病院 
小児科 
医師 上土井(じょうどい) 貴子

 小児科医のうれしさの一つは、子どもの成長を見守ることができることです。

 子どもは、相手や場面が変わるだけで、違う感情や行動を見せます。次々に初めての体験をしていくわけですが、そのたびに未知の感情を覚えたり行動したりします。

 やがて、自分の大切なことを他の人に伝えたくて言葉を使い始めます。特に大切な人には伝えたい気持ちが強くなり、だからこそ、伝えられなかったとき、「なんで分かってくれないの!」と憤慨し、気分が落ち込みます。

 伝えられなかった悔しさが繰り返されると、伝える努力をやめて諦めてしまうことになりかねません。自分の大切なことを他の人も大切なこととして理解してほしいという思いこそ、人とつながりたい気持ちの原点なのだと思います。そして、大切なことを伝えることができたときは、それができた自分自身を大切だと感じる瞬間でもあるでしょう。

 子どもは自分で伸びる力を持っています。大人はその力を信じ、支えていくことが大切です。同じ景色や体験を共有して、子どもが伝えたいことを一緒に感じ、想像し、言葉で表現することを支えてあげれば、子どもは新しい感情や行動に出会え、学習し、考える力にしていきます。

 その考える力が、適切な行動を生み、達成感や自信を持たせ、自分以外の事柄にも視野を広げさせ、他人への共感や理解につながります。

 子どもの毎日は大切な日々です。「今度ね」「早くしなさい」「何を言いたいの、忙しいのよ」で片づけないよう、私自身、気をつけていきたいものです。