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「あれんじ」 2014年2月1日号

【慈愛の心医心伝心】
【第三十五回】いつかは魔法使いのように

女性医療従事者によるリレーエッセー【第三十五回】

【第三十五回】いつかは魔法使いのように
熊本大学医学部附属病院
歯科口腔外科
医員 大地(おおち)可菜子

 熊本に来て口腔(こうくう)外科の仕事を始めて4年になります。口腔外科と言うと皆さんなじみが少ないかもしれませんが、口腔がんや口腔腫瘍、顎関節症や口腔粘膜疾患など、口腔内の病気を専門とし、手術によって腫瘍を取り除いたり、口腔の機能を回復する分野です。
 以前から、口腔外科に興味があり、迷わずこの道に進みました。しかし、医療の現場は教科書通りのことばかりではなく、また、ドラマのように全てがハッピーエンドばかりでもありません。
 もちろん、驚異的な回復力に驚かされることも多々あります。患者さんやご家族の笑顔を見た時は、本当に心からうれしく、この仕事に就いて良かったと思います。
 しかし、医療は魔法ではなく、時には症状がなかなか改善せず、歯科医師としてやるせなさにさいなまれたことが何度もありました。「私にはこの仕事は重すぎる。辞めたい」と思ったこともありました。その時、患者さんから明るく「病気とも先生とも長く付き合っていかんとしょんなかたい。また、先生に会うのを楽しみに来ます」と言ってもらえました。消えかけていた歯科医師としての自分の存在と役割を再確認でき、この仕事を続けようと改めて決心しました。
 魔法使いにはなれないけど、患者さんと一緒に病気と戦い、患者さんに近い存在であり、その人にとって一番良い人生が送れるようなサポートができるように、日々修業中です。いつか、もっと医療が進歩し、魔法使いのようになれる日を夢見て、患者さんと共に歩んでいきたいと思っています。