【熊遊学(ゆうゆうがく)ツーリズム】
ダイエット? 糖尿病予防? 「骨格筋」の底力!
先端の研究者をナビゲーターに、熊本の知の世界を観光してみませんか! 熊本大学を中心に地元大学の教授や准教授が、専門の学問分野の内容を分かりやすく紹介する紙上の「科学館」「文学館」。それが「熊遊学ツーリズム」です。第22回のテーマは「骨格筋の発生と再生」。さあ「なるほど!」の旅をご一緒に…。 取材・文/宮ア真由美 |
はじめの一歩 |
「骨格筋」と聞くと、わが身の運動不足ぐらいしか頭に浮かびません。でも、骨格筋について知ることは、鍛えることへの第一歩⁉ だと思って、ラジオ体操をした後で研究室を訪ねました。 |
【Point 1】「骨格筋」とは? |
私たちヒトの筋肉には、平滑筋(へいかつきん)と横紋筋(おうもんきん)の2種類があります。平滑筋は内臓をつくっている筋肉で内臓筋とも呼ばれます。横紋筋には心筋と骨格筋があり、今回ご紹介するのは「骨格筋」です。 |
【メモ1】「骨格筋」の重要な働き |
骨格筋には、大きく分けて3つの働きがあります。 |
【Point 2】「サテライト細胞」の働き |
骨格筋のもう一つの特徴は、再生能力に優れている点です。体内の細胞は一定の周期で入れ替わっていますが、その周期とは別に、激しい運動などで筋肉の一部が傷ついたりして組織がこわれると、それまで眠っていた「サテライト細胞」という幹細胞が目覚めて(活性化)、壊れた部分を再生します(図1)。 |
【Point 3】「筋ジストロフィー」の治療法に向けての研究 |
全身の筋肉が侵されて筋力がなくなり、萎縮していく「筋ジストロフィー」という遺伝性の疾患があります。この病気には多くのタイプがありますが、最も罹患率が高くて重篤なタイプはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)と呼ばれるもので、男児の3500人に1人がかかると言われています。 |
【メモ2】筋骨隆々のマッチョなマウス出現! |
骨格筋の細胞内にある「ミオスタチン」というタンパク質は、筋肉量を調節する働きをしています。このミオスタチンが欠損すると、筋肉が異常に発達することが知られています。 |
【メモ3】ヒョウタンから駒!筋ジス治療法研究から育毛剤開発の可能性 |
降圧剤の研究途上に毛髪が生えてきたことから、育毛剤が作られたというエピソードは有名です。同じように、筋ジストロフィー治療法開発のための研究の一環として、骨格筋を再生させる関連因子として注目されている分子の一つ、チモシンβ4から育毛剤が開発されるかもしれません。 |
【Point 4】筋肉再生因子の研究 |
中山准教授は、東京都臨床医学統合研究所にいたころ、DMDの治療法の中で未開拓の分野である再生因子治療に着目しました。 |
【なるほど!】 |
中山先生の研究は、筋ジストロフィーの患者さんを救う治療法につながる実用的な研究です。先生の研究が、有効な治療法への突破口になればいいですね。 |
熊本大学大学院
自然科学研究科(理学専攻) 生命科学コース 中山由紀准教授 筋肉がどのように発生し、どのように再生するかを研究しています。 |