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「あれんじ」 2013年9月7日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第三十二回】育児で育自

女性医療従事者によるリレーエッセー【第三十二回】

【第三十二回】育児で育自
熊本大学医学部附属病院
眼科 医員
柿添 直子

 「もう、こんな時間!?」。毎日の私の独り言。
 仕事、家事、育児を効率よく進めるよう努力していても、実際は時間に追われる日々。余裕を持ってゆっくりと、その時々を楽しみたいと思ってはいるものの、わが家の小学生と双子の年少児との3人の育児は、未だに手探りの戦闘状態です。
 「自分の時間」と「家族の時間」を充実させたくてもなかなかうまくいかずに悩んだり、子どもが病気のとき、「大丈夫かなぁ」と心配で落ち着かない母親の私と、「この状態なら経過観察」と判断する医師の私が葛藤したり、仕事で疲れている時に言うことを聞かない子どもたちに向かって声を荒らげたり…。
 3人の寝顔を見ながらその日の自分の言動を振り返って反省し、涙することもあります。そして育児の大変さに気付くたびに、私に惜しみなく愛情を注いでくれた両親と天国の祖母への感謝の念が湧き上がります。
 限りある時間の中で、子どもと過ごすひとときは大変貴重なものだと思います。正解のない育児で私が特に心がけているのは、一緒に歌ったり、追いかけっこをしたり、色んな話をしながら料理したり、絵本を読んだり、といった一見ささやかなことです。
 「あなたをちゃんと見ているよ」と伝えたくて、そして子どもたち自身に「自分は愛されている」と実感してほしくて、そんな短くても幸せな時間を大切にしています。
 これからも多くのことに悩み、試行錯誤しながら、子どもたちと一緒に私自身も成長していけたらと思っています。