すぱいすのページ

「あれんじ」 2013年7月6日号

【四季の風】
第22回 日傘の風景

 私はさしませんが、日傘を見るのは好きです。白、黒、その他絵柄もあって、楽しいものです。
 日傘は、女性にとって夏の強い日差しに対して欠かせないものですが、ときに生活の中の小道具にもなります。ふとした瞬間、絵になり俳句になります。

日傘先づくるりと廻し歩きけり     小泉安壽子

 まず、家を出る時の風景です。きっと楽しいことでのお出かけでしょうか。「くるりと廻し」に、ちょっと弾んだ心が見えます。


挨拶の傾き合へる日傘かな       篠原温亭

 次に、日傘がすれちがうときの風景です。日傘の二人が出会った瞬間をとらえた句です。このお二人は和服でしょうか。なかなか優雅です。
 最後に、街中の風景。ある日、上通の長崎書店の前を歩いているときのことです。お城へ曲がる角のところを、日傘の若い女性が二、三人にぎやかに歩いていました。明るい声に振り返ってみると、日傘の上に熊本城が見えました。白い日傘と黒いお城、それに青い夏空。この句ができたとき、私はあらためて熊本が好きになりました。


軽々とお城を乗せてゆく日傘 岩岡中正