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「あれんじ」 2012年9月1日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第二十四回】育てるつもりが育てられていた

女性医療従事者によるリレーエッセー 【第二十四回】

【第二十四回】育てるつもりが育てられていた
立志学園
九州中央リハビリテーション学院
作業療法学科専任教員
河口 万紀子

 私は現在、作業療法士を育てる専修学校の教員をしています。今年3月に4年間担任した学生が卒業しました。
 担任した学生を世の中に送り出したのは初めてのことで、教員という仕事は、想像していたよりもずっと、根気とエネルギーが必要だと痛感しました。
 本当に信頼関係を築いていないと本気の指導ができないことや、学生が納得し成長するまで関わり過ぎず、待つ時間が必要なことも学びました。また、学生の成長のためには、担任一人で抱え込まず、他の先生に助言してもらったり、時には委ねたりと、たくさんの人が関わるのが良いことも学びました。
 新1年生を担任することになった今年4月、新しい学生たちとうまく向き合あっていけるか自信が持てず、不安な心情を卒業生の一人に何気なくメールをしたら、「先生らしくやってください。それが一番です」と励まされてしまいました。大人になってゆく卒業生たちと夢や悩みを語り合うのが、私の宝の時間になりそうです。そして、これから新しい1年生とどんな関係が結べるのかも楽しい課題になりました。
 新米教員として、医療や福祉にたずさわる人間を育てようと一生懸命やってきたのですが、ふと気がつくと、私自身も育てられていたと感じます。そしてこの4年間の経験は、臨床で患者さんと関わっていたころ、多くのことを患者さんから学ばせていただきながら成長できたことを、あらためて思い出させてくれました。