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「あれんじ」 2012年3月3日号

【慈愛の心 医心伝心】
【第二十回】心臓のリハビリ

女性医療従事者によるリレーエッセー 【第二十回】

【第二十回】心臓のリハビリ
熊本大学医学部附属病院
循環器内科
医師 田中 朋子

 私は循環器内科領域の中で、心臓リハビリテーション(リハビリ)という部門を主に担当しています。循環器疾患には急性心筋梗塞(こうそく)など、いわゆる「救急医療」の対象となるものが少なくありません。私もそういう現場に関わること、はや14年が過ぎました。しかし、そんな急性期治療の重要性を肌で認識しながらも、ある種の「限界」を感じていました。
 救急医療での「急性期治療」を無事に終えても、数カ月後に悪化して再入院になる患者さんがたくさんいらっしゃいます。原因の多くは、一人暮らしの高齢者で服薬がきちんとできていないことや、「治った」と勘違いして不摂生をしてしまうことです。また逆に、心臓病だから「無理はできない。動いてはいけない」と思い、じっとしていて体力が低下していく患者さんがいらっしゃるのも事実です。
 「心臓のリハビリ」といっても、あまりイメージがわかないかと思います。心臓も、脳梗塞で具合が悪くなった手足と同じように、病気を発症したら機能は低下します。しかし、心臓病でも心臓に負担をかけない範囲で適度な運動をすれば、長生きできると言われています。それに取り組むリハビリは、患者さん自身が動かなければ進まない治療です。時間や苦痛を要しますが、その分高い達成感と効果が得られ
ます。
 また、理学療法士から運動療法の指導、栄養士からは食事療法の説明などと、多角的に支援してもらえることも、リハビリの効果を高めている要因です。
 急速な高齢化が進む現在、「病気と上手におつき合い」できるような環境づくりの必要性を感じています。